それが、覚えているすべてのこと。 それからの何年か、本当に色んなことが変わってしまった。 背が伸びた。 騎士団に正式に合格して、ずっと使っていた剣を変えた。 彼は、宝石みたいにきれいな長い髪を、ばっさり切ってしまった。 変わらないのは、彼女の声。 くるくる変わる表情に、元気で、優しい、その笑顔。 後、変わっていないのは、きっと城の庭くらいだろう。 女王様の趣味で、数え切れない程の花に囲まれた、その場所。 その城の庭は、一年中花が咲き乱れている。比較的暖かい気候のせいもあるだろう、寒い時期、ましてや雪の降ることなど、ほとんど無い。 その花だらけの庭の一部、薄い黄色の花の咲く場所に、一人の少年が寝転がっていた。隣では、真新しい鞘におさめられた真新しい剣が、花に埋もれている。肩に少し足りない砂色の髪が、揺れる花びらにほとんど同化しているように見えた。 少年は瞳を閉じたまま、右手を口に持っていき、大きな欠伸を噛み殺した。上がった肩が、一息ついた瞬間に、ふっと下がる。その瞳が薄く開かれた。 覗いた瞳は、まわりの花の茎と葉と同じ、若草色だった。 その瞳でぼんやりと見上げる空は、広い。 真っ白な雲が、空のあちこちに散らばっていた。 ふと、視界が暗くなる。 それと同時に、花達をかき分ける音。 「……ああ、やっぱり。またここにいたの? ザルツ」 「……え……、……セ、セルシア様!?」 覗いた顔と聞こえた声に、慌てて身を起こし、振り返る。 サファイア色の瞳が、太陽に背を向けているせいで黒ずんで見える。風が吹くと、プラチナブロンドの長い髪と、サファイア色のドレスが、ふわりとなびいて。 そこには、穏やかに微笑む、セルシアが、いた。 「どうしたんですか? 今、勉強のお時間のはずじゃ……」 「イルザムが、ザルツを探してたの。それで」 「え……、……イルザムが? ……どうしたんだろ……」 「手合いの相手を探しているんじゃない?」 「……手合い……」 自分と同期で、同い年の友人の姿を頭に浮かべる。手合いというと、大概自分が付き合わせ、向こうから言ってくることなどあまり無いのだが。 珍しいことがあるのか、はたまた別の理由があるのか。目を宙に泳がせ心当たりを探る。 その顔を横から覗き込み、セルシアがふわっと微笑んだ。 「……ねえ、ザルツ。お稽古、大変?」 「え?」 唐突に話を振られ、一瞬言葉を詰まらせる。 無邪気に自分を見つめるセルシアの瞳から、少し視線をはずして、ゆっくりと答えた。 「……え、……えーと……。……大変、……ですけど」 「だけど?」 今度は、しっかりとセルシアの瞳を見て。 「……俺……じゃなくて私達は、町の人とか、セルシア様もそうです。 この国を、守るために、剣の稽古をするんです。 ……だから、大変だなんて、思っていられない……です」 「……そっか。……ところでザルツ、まだそのくせ直らないの?」 彼のくせ。 俺を私と言いなおしたり、やたらかしこまる、彼の癖。 彼にしてみれば、それはセルシアがこの国の王女だからなのだが、セルシアは、それが気に喰わなかった。その身分故、同い年の友達がほとんどいないセルシア。同い年の青年にかしこまられるのは、自分が特別だと思い知らされた。 「……すみません、……けじめは、ちゃんとつけないと」 「……。……ま、いっか。じゃあ、私は行くね」 「あ、はい。……ありがとうございました。イルザム、探してみます」 「うん。……じゃあね、ザルツ。お稽古、頑張って」 にこりと笑うと、セルシアはくるりと背を向けた。動きにそって、プラチナブロンドの髪の上を、光の帯がせわしなく歩く。 ザルツはその後ろ姿を、見えなくなるまで目で追いかけた。いなくなったのを確認してから、はぁ、と息を吐いた。 そして、ゆっくりと立ち上がる。かがんで花の中に手を突っ込み、真新しい剣をひろった。 それを背にかけ、大きくのびをして、出口に向かって歩き始めた。 「……あ、ザルツ!」 「え?」 相変わらず天井の高い、城の中。 赤い絨毯の敷かれた廊下に、誰かの声が響いた。物腰のやわらかい、澄んだ声。きょろ、と辺りを見回すと、遠くから走ってくる人影があった。 それは、こちらへ近づいてきて、 「いたいたー、あのね、イルザム君が探し――ぅわああぁっ!」 「……あ」 たどり着く前に、派手に転んだ。ザルツの目の前で、宝石のような薄碧の短い髪が、さら、と揺れる。 転んだ彼は、廊下の床に突っ伏して、しばらく動かなかった。 「……おーい。……大丈夫か、リビア?」 「……いっ……たぁ……。……あぁうん、大丈夫」 あからさまに呆れた声で問うと、リビアは頭を押さえながらゆっくりと体を起こした。顔を上げ、にこりと微笑む。 はぁ、と大きく溜息をつくと、ザルツはリビアの腕を引っ掴み、床から引き剥がした。 「……何でそんなによく転ぶんだ……」 「さあ。体質かな?」 「……」 そんな体質の人間……否、エルフがいるわけがないだろう。 言っても呑気な返事を返されるだけの言葉をぐっと呑み込み、再び溜息をついた。それをどう受け取ったのか、リビアが不思議そうな顔をし、直後、また微笑む。 「あぁ! ……あのね、ザルツ! イルザム君が探してたよ」 「そうか、それはどうも……って言いたいんだけど、……セルシア様に聞いた。 二人で探してたのか……わざわざ、ごめんな」 「セルシア姫に? ああ、そうか、聞いたのか。……まぁいいや、じゃあ、早く行ってあげなよ」 「そうするよ。……じゃあな、リビア。もう転ぶなよ」 「大丈夫だって。いくらなんでも、そんなに転ぶ人なんていないよ」 あはは、と笑い、じゃあねと言うと、リビアはくるりと踵を返す。 少し走り出したところで、 「うわっ! ……」 「……おい」 派手に転んだ。 赤い絨毯の、廊下に突っ伏す。 ザルツは盛大に溜息をつくと、リビアの方にゆっくりと歩いた。腕を引っ掴み、引っ張り起こす。 厳重に注意を言い渡すと、今度はザルツの方が踵を返した。少し、速足で歩く。 廊下を曲がり、騎士団の宿場の方へと向かう。 後ろから、誰かが転んだ音がしたような気がしたが、絶対に気のせいだと強く自分に言い聞かせて、外への扉を押し開けた。 「……うん、行ったね」 「大丈夫?」 廊下の曲がり角、死角になっていたところから、プラチナブロンドの髪が、ひょこっと覗く。 そっちに振り返り、大丈夫、と言う言葉の代わりに、にこりと微笑んだ。 「……じゃあ、行こ!」 高い声が、小さく響くと、二人は走った。 廊下の突き当たりの扉から、庭へ。 その庭を、一番向こうまで突っ切って。 城の敷地の端。 そこそこに城に近く、そこそこに城下町に近いところに、騎士団の宿場は建っている。まわりには木が多く立っており、日差しの強い日でも、大分涼しい。 宿場の扉は二つ、ザルツは右に見える扉を開き、中に入った。左に伸びる木の廊下を行き、一つ目の角を右に曲がる。新人の寝泊りする部屋が集まっているところだ。 ちなみに、一つ目の角を曲がらず二つ目の角で曲がると、騎士団所属五年以上の者の部屋がある。三つ目の角を曲がった先は、団長や副団長など、腕の立つ者や、古株のいる部屋だ。 三つ目の角を曲がらず真っ直ぐ行けば、左の扉から外へ出れる。扉は二つあるが、中は一本の廊下で繋がっている、ということだ。 ザルツは一つ目の角を曲がった後、一番奥の部屋へ向かった。途中、同年代の青年達とすれ違い、軽く挨拶を交わした。 一番奥の扉を、ゆっくりと開ける。 中を覗くと、椅子に腰掛け本を読んでいる、一人の少年がいた。 「……イルザム?」 「ん?」 ぎし、と木製のイスが音をたてた。音に合わせ、その少年がこちらを向く。 「……これはこれは。栄えある騎士団長のご嫡男じゃないか」 「茶化すな、イルザム」 「はは、そんな睨むなって。……で、どうしたんだよ、ザルツ」 「は? ……何って、」 読んでいた本を閉じ、寝台の上に放り投げると、イルザムが今度は身体をこちらに向けた。告げられた言葉に、疑問形で問い返す。 「お前が俺を呼んだんだろ?」 「……はあ? 何言ってんだよ、オレはずっとここにいたぜ」 「……え……? ……でも……」 二人が、目を丸くして顔を見合わせる。噛み合わない二人の言い分。 「……セルシア様と、……リビアが」 「……俺はここ三日、王女様にも、エルフの坊ちゃんにも、会ってねえぞ」 「……え……?」 そんな馬鹿な。 ザルツとイルザムは、顔を見合わせたまま。 ……ザルツの頭の中を、嫌な予感が駆け巡った。 「……! げっ……、」 「……ど、……どーしたんだよザルツ」 「……しまったっ、くそっ……!」 イルザムの問いかけなど、聞く耳持たず。 ザルツは踵を返し、背中を向けると、勢い良く部屋から飛び出した。廊下を、驚く面々の間をお構いなしに通り過ぎ、宿場の外に出、辺りを見回した。それらしい人影は無い。 肩で息をしながらその場に立ち尽くしていると、後ろから軽く小突かれた。振り返ると、そこには同じく息を乱した、イルザムがいた。 「何、どーしたんだよ急に。何か心当たりでもあったのか?」 「……ああ、……あったよ、思いっきり!」 ザルツが、その場から駆け出す。方角は、城の方。その方角に躊躇しながら、イルザムが後を追いかける。少しだけの距離はすぐに縮まり、イルザムはザルツの横に並んだ。 「セルシア様だ! ……リビアも共犯かよ、あいつっ……!」 「は? ……何だって、王女様がどうかなさったのか?」 「セルシア様が、城を抜け出したんだよ! ……たまに、この手を使うんだ! 何で思い出せなかったんだ、……あーもう俺のバカっ……」 「え? ぬ、抜け出したぁ!?」 思わず叫んだイルザムだったが、慌てて口を噤んだ。王位継承者が、脱走。子供のいたずらだろうが、不用意にふれ回っていいことではない。 「城の門は騎士がいるし、抜け出せると言ったら庭の塀を越えるくらいだ。でも、庭にはいつも俺がいる。……ていうか、ほとんど俺しかいねぇ、だからだ!」 「……あーなるほど、お前を庭から追い出せば、簡単に抜け出せるんだな」 「塀の外にも騎士はいるけど、立っている場所は、間隔が長いからな。場所を選べば、簡単には気づかれないさ。 片や森育ちのエルフ、片や身軽でおてんばなお姫様」 走りながら会話していたせいか、いつもより息が切れてくるのが早い。城の門に着いた頃には、二人とも息が上がっていて、身体ごと上下していた。 ザルツが、迷わず中に入る。イルザムは、一瞬竦んだ。 普通、城の中などそう簡単に入れるものではない。ましてや、正門からなど尚更だ。だが、ザルツは騎士団長の息子。そんなの気にせず、堂々と入れる。 イルザムは、しばらく考え込む。赤い絨毯の廊下を走って、どんどん小さくなっていくザルツを目で追い、……覚悟を決めたように、城の中に入った。ザルツと違い、彼は城に入ったことがほとんど無い。……というより、ザルツが異常だ。 たくさんの数の扉を追い越し、時々、高い天井に目を向ける。 しばらく走れば、またザルツと並んだ。彼の方が、ザルツより足が速い。 ザルツとイルザムは、一つの扉の前で立ち止まった。 そこは、ザルツがよく訪れる、一人でいるには広すぎる場所。 ザルツの他は、女王が訪れていただけの。 「……」 二人で顔を見合わせ、ザルツが扉を押し開けた。 視界が、一面の、淡い、時々強い鮮やかな色に。嗅覚が、むせかえる程の花の香りに、支配される。 「……すっ……げぇ、……な」 イルザムがここを訪れたのは、もう何年も前のことだ。 ひとりごちているイルザムとは逆に、ザルツは、特に驚く様子も無く、代わりに、ひどく慌てた様子で、花の中を突っ切る。ほぼ毎日ここに足を運んでいるのだから、驚かないのは当然だ。 余程セルシアのことが気にかかっているのだろう、辺りをきょろきょろと見回すザルツを、イルザムは追いかける。 「……なぁ、ザルツ」 「何だ?」 「王女様が、エルフの坊ちゃんと抜け出したとして、何処に行くんだ?」 「……この庭を突っ切って、塀を越えて……、……行けるのは、……森だな」 「森?」 黄色い花、赤い花、薄いピンク色の花を、足でかき分けながら進む。イルザムの方が、ザルツより若干背が高く、少し見下げるかたちになる。 「……リビアの、故郷だ。……今は、森とは言えないけど」 「……あぁ……。……何年か前の……」 リビアが、城に住むことになった理由だ。 ザルツは横目でちら、とイルザムを見ると、前を見据えた。花の終わりに見つけた、灰色の塀。平らなわけではないので、窪みに足を引っ掛けていけば登れるだろう。おそらく、セルシアとリビアも、同じ方法を使ったはずだ。 「……」 ザルツが、一瞬。 その塀に手をかけるのを、躊躇した。 「……どうした、ザルツ?」 「……、……あ……、……いや、」 砂色の髪を揺らせて、何でもない、と続ける。 背中の剣を確認すると、ザルツは塀に手と、続けて足をかけた。ザルツが塀の向こうに消えた後、イルザムも同じように、塀を登った。 『……寂しいの?』 『……どうして、そう思うの?』 だって、その背中が、いつも寂しそうで。 向けられる微笑みが、どことなくぎこちなくて。 『……ねぇ、だったら』 あそこに行こうか。 一度だけ、連れていってもらったことがあるんだ。 『……今も、あるかな。……あると、いいな』 あの森を越えたところに、あるんだ。 それは、とても優しくて、私は、大好きだ。 一回しか見たことがないけれど、今でも忘れない。 『……ね。行こう、一緒に』 君にも、見せてあげたいんだ。 塀を越えたところ、なだらかな丘を真っ直ぐに走り、もうしばらく行っていない場所を、目指す。何年か前は、ここまで来れば、深い深い緑が見えたのに、今は見えない。 当然だ。燃えてしまった森は、そう簡単には元通りにはならないのだから。わかりきったことを頭の中で反復し、ザルツは、息を切らせながら走る。イルザムもその隣を走っていた。 ベルトと鞘とがぶつかり、小さな硬い音をたてる。背の低い草は、二組の足に掻き乱され、ガサガサという音を、止むことなくたてていた。 走りながら、ふと顔を上げる。太陽は、傾きかけていた。 「……!」 ふと。 視界に、何かが入ってくる。その光景に、二人はどちらからともなく、足を止めた。 「……」 「……久し、……ぶり、……だな……」 そこにあったのは、無残な焼け跡だった。ところどころから木の芽が出ているが、そんな小さな芽で、森だと思えるはずもない。 以前は見えなかった、森の向こう側まではっきり見える。 森の向こうには、やはり丘が広がっていて、あるところで、ぷつりと途切れていた。……崖だ。 「……セルシア様……」 「……いないぞ。オレには、見えないな。王女様も、エルフの坊ちゃんも」 息を整えながら、イルザムがぽつりと言う。 焼けた後、まだわずかに残った木の陰に隠れていないか、とか、そんなことを考えながら、ザルツは周囲を注意深く見渡した。 だが、やはり、二人は見つからない。プラチナブロンドの髪も、宝石のような、薄碧色も。 その代わり、見つかったのは、とがった殺気。 「……」 「……逃げるのか、ザルツ? それとも、戦うのか?」 背中を合わせ、周囲を見る。ザルツが、背中の剣を、鞘ごとベルトから外した。軽い金属音を聞き、後者だと理解する。 イルザムが、背中の鞘から剣を抜いた。剣と柄の付け根の装飾に、透明な石がついていた。 「……っ」 周囲にいるのは、居場所を追われた人喰い狼の群れだった。こげ茶色の毛の奥で、黄色い瞳が光っている。 「……気をつけろよ!」 ザルツが、鋭く言い放った。その瞬間、同時に踏み出し、狼の群れの中へと、飛び込んだ。 飛びかかってきた狼の懐に潜り、イルザムは腕を左から右へ真っ直ぐに振るう。斬れる音がした後、真赤な血が吹き出した。 その手でそのまま、自分の斜め下へ振り下ろし、一体。 後ろに跳んで下がって、微妙な間合いを取った。剣を、構える。狼が後ろに下がったのを見て、イルザムははっきりとした声で、告げた。 「色無き風よ、我が宝石(いし)に宿り給え。見えざる腕よ抱き、切り裂け! ――“シックル”!」 付け根の装飾の、透明な石が光った。 瞬間、彼の周りに風が起こる。 イルザムが前を見据えた時、周りにいた狼は、そのほとんどが、切り傷を負って、血を流していた。相当深く、しかし、致命傷にはならない程度の傷。 「……はあ、いつ見てもすごいよなぁ。……魔法剣士って、」 鞘におさめられたままの剣で狼をなぎ倒しながら、ザルツはその光景を見て、呟いた。 魔法を使えるくせに剣も使えるなんてずるいな、などと、そういった才能が一切無いザルツは、少し羨ましく、そう思う。 そう考えている合間にも、襲ってくる狼を、剣で倒していった。斜め後ろに跳び、横から襲いかかってきた狼を避けた。隙を見せた狼の後頭部を、鞘におさめられた剣で強打する。その狼はのけぞって倒れた。 その後何分かの間、二人は狼と格闘する。ザルツもイルザムも、やや手を抜いているように見えた。 特に、ザルツの方が。 「……ふう、……これで全部か?」 「あぁ……。……っと、相変わらずだな、お前」 「うん?」 刃についた血をぬぐい、背中の鞘におさめながらイルザムが言ったことに、ザルツは振り返る。 イルザムは、自分達の周りに倒れている狼に目を向けた。 「鞘ごと剣使う、それだよ。相変わらず、血が苦手なんだな。 ……ちゃんと、剣抜いて戦えば、六年前に騎士団入れたのに。 こんな、今更じゃなくて」 「……」 イルザムが、笑わず告げた言葉に、ザルツが、視線をそっと向ける。 あいまいに微笑むと、剣入りの鞘を、背中にやった。 「この狼、どうする?」 「ほっといて大丈夫だろ。……人間の、手出しできることじゃないよ」 「……だな」 顔を見合わせ、同時に、一息つく。 狼の群れから抜け出し、背中を向けた。 森とは呼べない、森を抜けて。 心の不安を、拭い去る為に。 二人はずっと、前ばかり見ているから。 後ろから、ひときわ大きな狼がつけていることに、気づかない。 |